INFORMATION WARFARE
インフォメーション・ウォーフェア
COLUMN 009
 
1990年代から急激に成長した情報技術は、現在あらゆる分野のネットワークシステムに結びつき、社会の神経系となっている。インフォメーション・ウオーフェアはコンピュータ及び通信網の発達によりクローズアップされた戦争の手段で、情報に関する戦いを表す概念のひとつである。コソボ紛争では実際にインフォメーション・ウォーフェアの一部である相手の通信網へ電子攻撃を掛けたという。

米国防大学(NDU:National Defense University)では、インフォメーション・ウォーフェアを以下の7形態に分類している。
 
 
 指揮・統制戦争(Command-and-Control Warfare C2W)
指揮官、指揮司令部に対する攻撃。指揮通信システムや電力供給システムに対するソフト爆弾攻撃など。ハッカーやコンピュータ・ウイルスによる電子的攻撃。偽情報の流布、投入。組織は主にトップダウン型の構造をしているため、この種の攻撃にさらされた場合、対処が必要である。
 
 電子戦(Electronic Warfare EW)
通信・電波妨害(広義には赤外線なども含む電磁波に妨害)、携帯電話の脆弱性(電波妨害、位置暴露)など。主な例にレーダーに対する欺瞞や無線通信のジャミング等がある。
 
 心理戦(Psychological Warfare PW)
噂、流言、宣伝ビラ、活字メディア、電波メディア、インターネットを利用して偽情報を流し、人心を操作する。アメリカの中東戦略で設立された中東向けテレビ「アル・フーラ」が好例である。
 
 ハッカー戦争(Hacker Warfare HW)
ハッカーによるリアルタイム攻撃、コンピュータ・ウイルスの投入による情報やシステムの改ざん及び破壊攻撃。ハッカー、ウイルスは一国の経済、交通、通信システムを破壊する可能性があり、複合ウイルスの開発(CVW)は生物兵器と同様な伝播が懸念される。また、暗号の利用と解読の危険性が上げられる。
 
 情報基盤戦争(Intelligence-Based Warfare IBW)
情報収集、戦場監視などのセンサー機能を妨害する。光学装置の破壊。情報伝達、処理機能、電子マニュアル、データベースの改ざんや破壊。EMP(電磁パルス)による電子回路の破壊、マイクロウエーブ兵器(ロシア製兵器)の拡散など。
 
 経済情報戦争(Economic Information Warfare EIW)
一国、地域の経済基盤を破壊する。送電制御システムや電子商取引のシステムを妨害。経済インフラ(通信、交通、電力、金融)の相互依存が増大している社会ほど有効である。
 
 サイバー戦争(Cyber Warfare CW)
サイバースペース内での戦い。ソフトウェアの仮想空間での情報は真意の判定が非常に困難なため、物質的空間の情報インフラに影響を及ぼす。偽情報の投入により相手を自由に動かすなど。身近な例ではフィッシング詐欺。
 
※インフォメーションウォーフェアの7形態は重複する箇所が多く便宜的である。国際的な定義もなされておらず、提唱した米軍でも国防省や陸海空軍で各々違った定義を用いている。
 
 
 
米国では、インフォメーション・ウォーフェアが現実の脅威であるとの認識から、1997年に国防総省が「エリジブル・レシーバー」というウォーゲームを行った。この演習において、「インフォメーション・ウォーフェアを受けた場合、米国の電力システムや交通システム等が致命的な大混乱に陥り、米軍の活動にも重大な支障を来す可能性がある」という結果が得られた。しかも相手側は約30人程度の高度な技術を持つハッカー・グループで十分だという。

インフォメーション・ウォーフェアは、情報そのものを攻撃対象とする新しい戦争概念であるが、その最大の特徴は、情報通信ネットワークを利用する事により時間的・空間的制約が全く存在しないという点である。また、インフォメーション・ウォーフェアは情報通信ネットワークという仮想空間の中に存在しているため、我々はなかなか自覚する事が難しい。